親子で考える
環境のこと
取材させていただいた
編集者・エッセイスト
中村 暁野さん
一年をかけてひとつの家族を取材する、家族と一年誌「家族」編集長。家族にまつわるエッセイやコラムを執筆するほか、環境に優しい暮らしに取り組む様子をメディアに連載中。2児の母。
短冊に書かれた、8歳の〝願いごと〟
AMOMAスタッフ 安:
本日は藤野(山梨と神奈川の県境)にあるご自宅にお招きいただき、ありがとうございます。緑豊かな素敵な場所ですね。中村さんはWEBメディアでエシカルな暮らしについて連載されていますが、環境のことを考え始めたきっかけを教えてください。
中村さん:
ずっと〝何かしなきゃ〟と問題意識は持っていたのですが、具体的に暮らしを見直し始めたのは、昨年の夏からです。
たまたま書店で目にした、海洋プラスチック問題についてのパネル展示。プラスチックがお腹に詰まり死んでしまった生き物たちの姿に動物が大好きな娘が大きなショックを受けたんです。その夏の七夕の短冊には『プラスチックを捨てる人がいなくなりますように』と書いていて。それを見て、10年前にマイ箸やマイフォークを買いそろえたことを思い出しました。あれはどこに行っちゃったんだろう…。「このままじゃいけない」と当時も思ったはずなのに、この10年、私は結局何も出来ていなかったなと反省しました。
そして、娘と一緒に、生活のなかで何を見直せるか考えてみることにしたんです。「さっき食べたおうどんも、大好きなお菓子もプラスチックの袋に入っている。私たちが買って食べているものは、あの写真とつながっていることだよね」 って。
PPPプロジェクト始めてみました!
AMOMAスタッフ 安:
なるほど。でも生活に取り入れるというのが、なかなか難しいんですよね。
中村さん:
そうなんです。だから我が家では「PPPプロジェクト」を始めてみました(笑)。PPPというのは、プラスチックペナルティポイントのことで。買っちゃったら1点、10点たまったらペナルティって決めました。それから私と子どもたちは一回もペットボトルを買ってないんですよ。夫は3点貯めていましたが…家族みんなが、意識するようにはなりましたね。
また好きなデザインのボトルをそれぞれ選び、好きなハーブティーや粉末状のドリンクを買いそろえることで「外出するときにマイボトル」を楽しんでいます。
子どもたちと一緒に考えてみる
AMOMAスタッフ 安:
素敵な取り組みですね。我が家でもぜひ真似をしたいです。プラスチックは身近な存在だからこそ、無理なく取り組めたらいいですよね。
中村さん:
そうなんです。だからプラスチックを「どうしたら減らせるだろう」といつも考えています。お茶は包装している外袋の材質やティーバックに注目して、堆肥化できる環境に優しい素材で作られているものを選んだり、パン屋さんにはさらしを持参し、無駄な袋を使わないように包んでもらうようにしたり。そういう工夫を一つずつ増やして、生活を見直していっています。
AMOMAスタッフ 安:
ただ子どもたちはプラスチックのものを欲しがることもありますよね。
中村さん:
ありますよね、「スーパーのガチャガチャやりたい」とか。その気持ちは分かるからすぐダメとは言いません。子どもだけでなく、私もたまには「ジャンクな物が食べたい!」って思うこともあります。そんな気持ちを否定すると苦しくなっていきますよね。でも、「これは本当に大切?もしかしたら1年後には大切にできなくなってゴミになるかもしれないよね」と話をし、子ども自身が考え、選んだ選択に向き合うことが大事なんじゃないかなと思っています。
子育ても、環境問題も、一歩一歩進もう
AMOMAスタッフ 安:
中村さんは2児のママ。ご自身の授乳期はどのように過ごされましたか?
中村さん:
当時は「こんなお母さんになりたい」という理想が強くあったんです。でも、実際に子育てをしてみると、思うようにいかないことが本当に多くて…。
小さい頃は特に目が離せず、そんな中で、「理想のお母さんになれない自分」を責めてしまい、それが一番辛かったですね。手作りではなく市販されているものを買うだけでも「手を抜いてしまった」と罪悪感を持ってしまい、夫との関係も良くなくてとにかく辛かったです。
AMOMAスタッフ 安:
どうやってその時期を抜け出したのですか?
中村さん:
娘との会話のなかでハッとさせられる言葉を彼女自身からもらえることもあったり、夫ともよく話し合いをし『そんな自分じゃなくていいんだな』って自然と思えるようになりました。
今は、理想に自分を当てはめようとするのは苦しいからやめたんですけど、だからって何でもいいわけではない。そうなりきれない自分を認めても、理想は変わらず持っていて、諦めなくてもいいと思っています。
それは環境の問題も同じです。すべて環境に良いものを選ぶのが良いに決まっている。でも今はできていないこともある。だから一歩一歩進むしかないなって。その一歩が小さすぎることで「もういいや」って諦めるのはやめようと思うんです。
「自分で責任をとれる」暮らしの範囲
AMOMAスタッフ 安:
約3年前、お子さんの小学校入学を機に東京から藤野へ。今の暮らしになって意識が変わったことはありますか?
中村さん:
まず、それまで〝なんとなく〟していた選択がなくなりました。東京にいたころは、モノが周りに多すぎて別に食べたくなくてもなんとなくお店に入ることがあったり、 子どもと『今日は買わない』って10分言い合いをするよりも300円出して買うほうが楽だ、という選択をしていたこともけっこう多くて。
でも今の暮らしでは〝なんとなく〟ではなく、これが食べたい、これがしたいっていうことを自分が納得して選ぶことができるようになりました。
例えば、我が家では野菜や卵はご近所さんから直接買っているのですが、その人のことが分かったうえで、育てたものに納得してお金を払うことが出来るんですよね。子どもたちも「おじさんが作ってくれている野菜だから」と多少好き嫌いがあっても、頑張って野菜を食べてくれるようになりました。一歩一歩、暮らしを自分の手に負える範囲に戻していきたい。環境に対して、責任をとれる暮らしをしてきたいと思っています。
0か100じゃなく「私はどう向き合うか」
AMOMAスタッフ 安:
環境問題という大きなテーマに捉えられがちで、どうしても自分ごととして考えられずにハードルが高いと感じる方も多いと思います。
中村さん:
環境問題に対して良く聞かれるのが、「それをして何になるの」とか「ペットボトルは買わなくてもあるものなんだから、あなた一人が買わないだけで何が変わるのか」という声。たしかに、個人でできることってすごく地味なことかもしれません。でも、それって0か100かの極端な話で考えることではないと思うんですよね。世の中や世界全体に対して行動を起こす、という大きなことではなくて、「この問題に対して〝私はどう向き合うのか〟ということなんじゃないかなって。
私は子どもに「ママはママのできることをやったよ」と言える大人でいたいなと思うんです。実は最初のうちは夫と私の間にも環境問題への考え方に温度差があり、ぶつかることも。でも、子どもと一緒に家族皆で取り組むうちに変わってきて、最近では夫が自らいろんなことを提案してくれるようになってきたんですよ。
AMOMAスタッフ 安:
私も、子どもと一緒に出来ることからやってみようかなと思いました。
中村さん:
別に環境問題に対する知識をしっかり持たなくちゃ、と思わなくてもいいと思うんです。自分ができそうなことから、一歩一歩変わっていけたら良いですよね。どんなに小さなことでも、やらないよりは、やったほうが環境に良いことにつながる。だからその「一歩」を大切にしたいと思います。
私のオフショット
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うさぎのバターちゃん
娘さんの誕生日プレゼントとして家族の一員に。
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中村さんの台所
ヘチマたわしなど、暮らしのひと工夫を実践されている中村さんの台所
お話を終えて
一歩一歩から始めてみようと思いました
お話しを聞いて私自身も環境に興味があったにも関わらず、何もできてなかったなということに気づかされハッとしました。ただ毎日の中でプラスチックを避けることは本当に難しく…。中村さんがおっしゃってくださったように、「自分ができそうなことから、一歩一歩変わっていけたら」という気持ちを忘れず過ごしていきたいと思います。また取材させていただいたご自宅は、本当に素敵で、ただただ憧れてしまいました。
AMOMA STAFF安 真梨子
AMOMAにはホームページのリニューアルから参加。家では4歳の子供のママです。ちょっとお口が達者な娘に振り回されながらも充実した毎日を過ごしています。