産後の
心と体を
いたわろう


取材させていただいた
NPO法人マドレボニータ
代表 吉岡マコさん
東京大学大学院で運動生理学を学び、24歳で出産。自身の体験から産後ケアに特化したプログラムを開発、オンラインで全国から受講できる。
■笑顔で子育てするために産後のケアが大切


AMOMAスタッフ 安:
産後ケアのお仕事を始めたのはご自身の経験がベースにあると聞きました。
吉岡さん:
22年前に出産をしました。妊娠中にはウォーキング、ヨガ、バランスの取れた食事などセルフケアを徹底し、出産も順調。しかしそれも束の間、産後あまりにも体が変化したことに驚いたんです。体はボロボロで歩くのもままならない中、赤ちゃんのお世話にヘトヘトで眠れない日々。「こんなの聞いてなかったな」って。
慌てて産後のケアがないか調べても、当時は自分のためにケアするのは贅沢かのような風潮で考え方自体がなかったんです。笑顔で子育てをするために、まずは母親が自分自身をいたわる「産後のセルフケア」があったなら、とその必要性を痛感しました。
■お母さんなんだからしょうがない?


AMOMAスタッフ 安:
聞いてない!という気持ち、とても共感します。
吉岡さん:
肩こりを保健師さんや病院の先生に相談しても「お母さんになったんだからしょうがない」と言われるばかりで、解決策は得られませんでした。そこで、産後の体をケアできるものがないなら自分で作ろう!と考え動き始めたんです。大学時代は体に関する学問を専攻していたのでその知識を活かして研究を始めました。
そうして自分の体を実験台にし、元気になりたくて完成したのが、産後の体に負担が少なく持久力や筋力を付け、骨格の歪みを直せるエクササイズ。
簡単で続けやすかったことから「必要としている方の役に立てたら」と週1回の教室を始めたことが今に繋がっています。
AMOMAスタッフ 安:
すごい行動力!教室ではどういったことをするのか教えてください。
吉岡さん:
全4回で1ヶ月完結のプログラムです。毎回120分の講座では、①有酸素運動でしっかり体を動かし、②参加者同士が自分の意見を語るシェアリングをし、③自宅に戻ってからのセルフケア方法(呼吸法や体操、骨格調整など)を学びます。
回を重ねるごとに体が元気になり、表情も話す言葉も前向きに変わっていくんです。その変化を自分で実感することで元気になれるきっかけとなれたらいいなと思っています。
■母親としてではなく、自分自身として向き合う


AMOMAスタッフ 安:
体のケアだけではない、②シェアリングについて教えてください。
吉岡さん:
教室を始めた当初は、体を動かすことに特化したプログラムだったのですが、参加者の皆さんが元気になると自分の話をするようになり「もっと表現したい」というニーズがあることが分かったのでプログラムに組み込むことにしたんです。
でも、雑談をするのではありません。二人一組で【人生・仕事・(配偶者との)パートナーシップ】というテーマ設定の中からひとつを選び、時間内で語り、相手はそれを聞き要約します。
これらのテーマって、出産後に大きく変化することなのになかなか話す機会がないんですよね。人に意見を伝えるためには、自分の気持ちを言葉にすることが必要なので、本当の気持ちに気づくことができるんです。
AMOMAスタッフ 安:
特に赤ちゃんとの生活では、母親としての自分でいるのが当たり前になり、自分自身の気持ちがどうなのかは考えていませんでした。
吉岡さん:
多くの方がそうなので、この場では赤ちゃんトークはせず、自分自身の話をしていただいています。
また、特に産後に孤独を感じている場合には、共感してもらえる仲間の存在が力になると思うんですよね。だからシェアリングの時間にお互いを深く知っていくことで、〇〇ちゃんのママではなく自分自身として繋がれる、大人の友人同士のコミュニティが出来ます。そうなることで、産後の孤独から抜け出し、困ったときにはSOSを出せる関係性を築いていただければと思っています。
■元気に帰って来てね!社会が応援する仕組み


AMOMAスタッフ 安:
今までの教室運営に加え、企業向けにも新しい取り組みを始められたと聞きました。
吉岡さん:
企業の〝復職支援プログラム〟を提供しています。対象は育休中の女性と、パートナーが出産した男性。私たちの産後ケアプログラムを、企業の費用負担で受講頂き、復職前のモチベーションアップや心構えができるようサポートしています。企業から女性への「元気に帰ってきてね」というメッセージにもなると好評です。
また、復職後に関わる上司や同僚の方へも産後ケアの必要性や職場復帰へのメリットを伝えるオンライン研修を提供し、復職する女性を周りの皆が応援する雰囲気作りを担っています。
■すべての家族に産後ケア


AMOMAスタッフ 安:
教室に参加する当事者だけでなく、産後ケアはどんどん対象を広げているんですね!
吉岡さん:
そうですね。産後すぐの女性だけを対象にするのは、必要な人に届けるという意味では正しいのだけど、同時に〝子育ては女性がやるもの〟という印象を固定させることにも繋がります。だから子育ては皆で取組むものだと感じていただくために啓発活動にも力を入れています。
例えば、出産準備。女性だけがその内容を把握するのではなく、夫婦一緒に勉強できるよう出産準備講座を動画にしました。夫婦で必要な情報を共有したうえで「じゃあ私たちはどうする?」と話し合える土壌を作ることがその後の子育てにおいては何よりも大切なんですよね。
AMOMAスタッフ 安:
企業でも、家族でも産後ケアが当たり前になると世の中の価値観が変わっていきますね。
吉岡さん:
最近では初の試みとして、産後ケアプログラムをオンラインでも提供できるようになりました。日本体育大学と産後ケアについての協同研究として420名のお母さんにご協力いただきます。今まで詳しく研究されてなかった産後の心身のケアの効果を実証できれば、もっと世の中にその必要性を広く伝えられるし、価値観を変えていけるのではないかと思っています。
■体を元気にすることが前向きになる一歩


AMOMAスタッフ 安:
お話を聞いていると、落ち込みがちな産後でも、まずは体が元気になることで前向きに変わっていけるような気がしてきました。
吉岡さん:
そうなんです。私も体を動かすと心の状態が良くなるのを体感し、体の学問に興味を持ちました。産後の心の落ち込みには、精神的な問題だけではなく、体が回復してない状態で無理をしていることも少なからず影響しているので、まずは体を整えることで前向きになってもらえたらと思っています。
参加者の方のなかには、子どもがかわいいので仕事を辞めると言っていた方が、回数を重ねるごとに「やっぱり仕事が好きだし、仕事をしている姿を子どもに見せたい」という本心に気づいて前向きになったりする方も。皆さんイキイキと自信のある表情へと変わっていくんです。そんな様子を見ていると、体が元気になるということは前向きな自分へと変わる第一歩なのだと思いますね。
AMOMAスタッフ 安:
最後に、先輩ママとして子育てをするうえでのアドバイスをお願いします。
吉岡さん:
「母親になったら子どもに尽くすのが当たり前」という価値観や「お母さんらしくしなきゃいけない」という思い込みに囚われず、母親になっても自分らしさを失わずにいてほしいと思います。子育てをしていると「お母さんらしさ」にとらわれてしまいがちですけど、あなたは、お母さんである前に、ひとりの人間。
だから子どものことも、一人の人として尊重することを意識しましょう。そうして「自分らしく」子育てを楽しめたらいいですね。
私のオフショット
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コンポスト
この袋は実は、毎日の生ごみを堆肥(土の栄養)に変えるコンポストが入っています。匂いもしないので、おすすめ。
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家庭菜園
一匹のかまきりが住み着いていて、毎日会えるかどうかを楽しみにしています。
お話を終えて


体を整えることで心も元気に
産後の心の落ち込みというと、ついつい話を聞いてあげる、など心の落ち込みに注目したアプローチをしてしまいがちですが、体を整えることで前向きになることもある、というお話しを聞いて「なるほど!」と勉強になりました。私も産後に知っていたら教室に通いたかったです。終始笑顔でお話ししてくださった吉岡さんに癒された取材でした。ぜひ皆さんも教室を利用してみてくださいね。

AMOMA STAFF安 真梨子
AMOMAにはホームページのリニューアルから参加。家では4歳の子供のママです。ちょっとお口が達者な娘に振り回されながらも充実した毎日を過ごしています。