【助産師監修】子宮外妊娠とは?症状や原因、治療法について
2018.06.01
Yoneco Oda
Mama writer
2010年生まれと2016年生まれの姉妹を育児中のママです。おっとりマイペースな姉と、好奇心旺盛でパワフルな妹。姉妹でも性格の違う二人の様子に、子育ての新鮮さや面白さを感じている今日この頃です。
浅井貴子
助産師
新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。
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子宮外妊娠は異常妊娠の一つで、全ての妊娠のうち約1~2%の割合で発症します。
発症率は低いですが、誰でもなる可能性があり、放っておくと「卵管破裂」などの命に関わるトラブルを引き起こすこともある怖い病気です。
今回は、子宮外妊娠について、症状や原因、治療法などを紹介します。
子宮外妊娠とは?
通常は、卵巣から排卵された卵子は、精子と受精して卵管を通って子宮へと向かいます。
子宮外妊娠とは、子宮内膜に着床するはずの受精卵が何らかの理由で子宮内膜以外に着床して根をはった状態のことで、正式には「異所性妊娠」と呼ばれます。
子宮外妊娠の約98%が卵巣と子宮をつなぐ卵管で起こる「卵管妊娠」ですが、まれに、腹膜や卵巣、子宮頸管などでも起こります。
受精卵は子宮の中以外では正常に発育できないので、子宮外妊娠の場合は残念ながら妊娠を継続することはできません。
子宮外妊娠の症状はあるの?
子宮外妊娠になった場合も通常の妊娠と同じように生理が止まり、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモンの分泌が増えるので、正常に妊娠したときと同じように妊娠検査薬で陽性の反応がでます。
そのため、初期の段階では正常な妊娠か子宮外妊娠かの判断はむずかしく、妊娠5週目~6週目をすぎた頃、エコー検査で胎のうが確認できなければ子宮外妊娠が疑われます。
胎のうが確認できなければ、採血をしてhCG値を測定するhCG検査も平行して行われます。
妊娠の週数が進むと受精卵が発育してくるので、妊娠6週目を過ぎた頃から不正出血や下腹部痛、腰痛などの症状がでてきます。
始めのうちは症状はゆるやかですが、状態が進むにつれて出血量が増えて痛みも強くなってきます。
妊娠7週目~8週目まで進んでいると、お腹の中や性器に大量の出血が起こり、急激な下腹部痛に見舞われる可能性があります。
「卵管破裂」になると、急性の貧血状態になり、進行すると出血性ショック状態に陥って、母体が命の危険にさらされることもあります。
このように、子宮外妊娠は対処せずにそのままにしておくと、重大な症状に発展することもある病気なのです。
子宮外妊娠の原因は?
子宮外妊娠は誰でもなる可能性のある病気ですが、原因としては、以下の3つが挙げられます。
卵管の異常
受精卵を卵巣から子宮へと運ぶ管を卵管といいます。
クラミジアなどの性感染症や子宮内膜症の病気にかかったり、卵巣や卵管の手術を受けたことで卵管が炎症を起こし、卵管内やまわりの器官で癒着を起こす場合があります。
卵管内に癒着すると、受精卵が子宮へたどり着けず、卵管で着床してしまいます。
受精卵の移動時の問題
通常なら受精卵は、卵管を通ってゆっくりと子宮に向かいます。しかし、何らかの原因で受精卵が卵管内に取り込まれず、腹膜や卵巣、反対側の卵管などに着床してしまうことがあります。
また、体外受精後の胚移植で受精卵を子宮の中に注入するときに、受精卵が迷い込んで、卵管内や子宮頸部に着床することもあります。
子宮内環境
過去に人工妊娠中絶や子宮鏡下手術の経験があったり、子宮内避妊具(IUD)を挿入していた経験があると、炎症などによって子宮内の環境が変化を起こして受精卵が子宮内膜に着床しづらくなります。
子宮外妊娠の治療法は?
子宮外妊娠を発症した場合は、症状の進行の度合いによって治療法が変わってきます。
子宮外妊娠の約98%が卵管内で着床する「卵管妊娠」ですので、主に卵管破裂を防ぐための治療が行われます。
経過観察
子宮外妊娠は、受精卵が成長せず自然に流産してしまうことも多いため、経過観察になることもあります。
受精卵が流産したり、組織に吸収される自然治癒を待ち、経過観察をおこないます。
自然流産することは、手術や薬の投与をするよりも母体への負担が軽いため、子宮外妊娠の経過としては順調ともいえます。
受精卵の大きさが卵管が破裂するほどに成長している、hCG値が高いなどの場合は手術になる可能性が高くなります。
薬物での治療
出血などの問題がなく、症状が軽く、hCG値が低い場合は絨毛細胞の増殖を抑える薬を卵管に投与することもあります。
これは、子宮外妊娠の発見が初期の場合に適用される治療法です。
メトトレキサート(MTX)という抗がん治療に使う薬を用いて胎のう・胎芽の成長を止めます。治療は注射のみで手術をしないので、手術や麻酔に伴う体へのダメージは避けられます。
また、卵管・卵巣を残すことができるというメリットがあります。
手術
hCG値が高く、受精卵が成長している場合は手術が必要になります。手術の方法は、卵管を残す温存手術と卵管ごと切り取る根治手術があります。
お腹の中で大量に出血していたり、卵管破裂を起こしていたりする緊急の場合は卵管ごと切除する手術を行います。
卵管も卵巣も左右に1つずつあるため、切除したらからといって自然妊娠ができなくなるわけではありません。
早めの受診を
子宮外妊娠は予防・原因の特定が難しい病気で、また、せっかく授かった命ですが妊娠を継続することもできません。
重症化するととても危険なので、早期発見、早期治療が大切になります。妊娠検査薬で陽性の反応が出た場合は、早めに産婦人科を受診しましょう。
しかし、正常妊娠であってもエコー検査で胎のうが確認できるのは早くても妊娠4週の後半頃のため、早すぎてもどちらとも判断できない場合があります。
通常胎のうが確認できる妊娠5週目~6週目(月経予定日の1~2週間後)に受診するといいでしょう。
ただし、腹痛や不正出血などがあった場合は、週数にかかわらずすぐに産婦人科にかかってください。
赤ちゃんを授かった喜びから一転、突然の悲しい結果を受け入れるのはとても辛いことです。冷静に治療のことを考えられない方も多いでしょう。
しかし、次の妊娠につなげるためにも不安なことは担当医に相談し、適切な処置を受けるようにしましょう。
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母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
心理カウンセラー
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