【助産師監修】妊娠中の血液検査-費用や項目について-
2018.07.30
AMOMA編集部
妊活中~産後の育児期は、かけがえのない喜ばしい時間であるとともに、時には不安や心配の方が多くなることもあります。“AMOMAよみもの”を通して少しでもその不安を解決し、笑顔で過ごすお手伝いができればと願っています。
浅井貴子
助産師
新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。
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妊婦健診に行くと何回か血液検査を受けますが、何を何のために調べているかご存知ですか?
実は妊婦健診で受ける血液検査は、妊娠中におこりやすい病気や、分娩時に必要な情報がたくさん分かります。妊娠中の血液検査で分かることを理解して、自分の体の状態を知っておくようにしましょう。
妊娠中の血液検査の回数や費用
妊娠中に受ける血液検査は全部で3回あります。
1回目の血液検査は妊娠初期で10週前後におこないます。2回目は妊娠中期で、24週~26週くらいにおこなうことが多いです。3回目は妊娠後期で36週頃にはおこないます。
費用は自治体から補助券がもらえるのでその分安くなりますが、妊婦健診は保険適応ではなく自由診療なので病院によって金額に大きく差があります。
おおよそは、検査項目が多い初期の血液検査はエコーなどの妊婦健診を含めて、3000円前後のところから1万円以上かかるところもあります。
妊娠中期と後期の血液検査で無料~5000円前後です。もし病院を転院して再度血液検査を受けるよういわれた場合などは、健康保険は使えないので自費となります。
血液検査の項目と内容
妊娠中に調べる血液検査の項目は大きく4つあります。
血液型の検査
1つは血液型で、ABO血液型、RH血液型、不規則抗体があります。ABO血液型が有名ですが、他にも種類があってRH血液型や不規則抗体も重要な項目です。
血液型を調べるのは、分娩時にもし輸血が必要になったときのためと赤ちゃんとの血液型不適合の可能性をみるためです。血液型の検査は主に分娩時や赤ちゃんが生まれてから必要になる項目です。
感染症の検査
2つ目は感染症の検査です。B型肝炎やC型肝炎、梅毒、HIV抗体、トキソプラズマ抗体、HTLV-1抗体、風疹抗体です。感染症を調べるのは赤ちゃんへの感染の予防と対策、医療者への感染の予防のためです。
B型肝炎抗体が陽性だった場合は赤ちゃんへの感染を防ぐために、生後にB型肝炎ワクチンを何回か接種する必要があります。
梅毒やHIV抗体、トキソプラズマ抗体が陽性だった場合はただちに必要に応じて専門機関で詳しい検査と治療をおこないます。
風疹抗体が低い場合は、もし妊娠16週までに風疹にかかってしまうと赤ちゃんの心臓や聴力、視力に異常が出る可能性があるので、かからないよう注意しなければいけません。
HTLV-1とはヒトT細胞白血病ウイルスの略で、感染していると将来白血病を発症する可能性があります。
HTLV-1は6ヶ月以上母乳あげることで母子感染の可能性が高くなることがわかっているので、ミルクへの切り替えなど対処が必要になってきます。
生化学検査
3つ目は生化学検査とよばれる検査で、腎機能や肝機能、糖や脂質の代謝機能、電解質などがわかります。妊娠中は体に色んな変化がおこり、腎機能の低下や妊娠糖尿病など代謝異常をおこすことがあります。
機能低下や異常があった場合は日常生活で気をつける必要や治療を受ける必要があります。
血 算
4つ目は血算と呼ばれるもので赤血球や白血球、血小板などの数や濃度を調べるものです。
特に必要になる項目は赤血球や血色素量(ヘモグロビン:Hb)で貧血を表す値です。妊娠中は血が薄まり貧血になりやすいからです。
妊娠中の赤血球の正常値は370万/㎥~400万/㎥、ヘモグロビンの正常値は11g/dl~14g/dlです。
貧血になると動悸、息切れなどママの身体に変調をきたすだけでなく、胎児の成長や分娩時に出血しやすい、母乳が出にくいなど産後にも影響を与えますので、正常値以下になる場合は早めに対処が必要です。
血小板は怪我をしたときなどに止血の働きをしています。非妊時の正常値は13万㎥~40万/㎥で妊娠時はやや下がるといわれていますが、まれに一時的に血小板数の減少がすすむ場合があります。
減少が著しい場合は分娩時に注意を要するため管理ができる大きな病院へ転院をいわれることもあります。
時期によって違う検査と注意点
妊娠初期
妊娠初期は血液型、感染症、生化学検査、血算を調べます。
このときにすでに貧血を指摘された方は今後さらに貧血が進む可能性があるので、生活の中で貧血食を心がけ飲み物は鉄分の吸収を妨げるカフェインを含まれないハーブティーなどにしましょう。
妊娠中期
血算、血糖、HTLV-1を調べます。血糖が高くなりやすい時期で、妊娠糖尿病になる可能性も増えてきます。
この検査で血糖が高めだった場合は、さらに糖負荷試験など詳しい検査をおこない妊娠糖尿病の有無を調べます。
妊娠中期になると初期では問題がなくても貧血になる人が増えてきます。貧血の診断を受けた場合は貧血の薬をきちんと服用して治療しておきましょう。
妊娠後期
妊娠後期は血算を調べます。主に分娩に向けて貧血がないかの最終チェックをおこないます。
貧血が進んでいる場合は内服薬だけでなく点滴で鉄分を補給する治療をおこなうことがあります。引き続き貧血食にも心がけましょう。
血液検査は赤ちゃんとママのため
妊娠中の血液検査は赤ちゃんにとっても妊婦さんにとってもとても大切な検査です。
妊娠中は体に色んな変化がおき異常になることも多いのです。検査内容や数値をしっかり理解して、早めに対処するようにしましょう。
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看護師、助産師、IFAアロマセラピスト、JMHAメディカルハーバリスト、NCA日本コンディショニング協会認定トレーナー
母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
心理カウンセラー
日本産婦人科学会会員その認定医、産婦人科専門医、日本ソフフロロジ学会会員、東京オペグループ会員、日本アロマテラピー学会会員
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