【助産師監修】産後クライシスを引き起こす原因と対処法
2015.09.25
AMOMA編集部
新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。
浅井貴子
助産師
新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。
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最愛の人と結婚し、二人の間に大切な我が子が誕生。人生最高の幸せがやってくるはずだったのに…毎日夫や周囲の人に対してイライラ、離婚の二文字が頭をよぎってしまう瞬間も。
もしかしたらそれは「産後クライシス」かもしれません。産後クライシスとは何か、また産後クライシスを引き起こす原因と対処法をご紹介します。
産後クライシスとは
産後クライシスとは「産後2年以内に夫婦の愛情が急速に冷え込む状況」を言います。厚生労働省の調査(※)によると、子供が0~2歳の時に離婚した母子世帯の割合は全体の35%にもおよび、産後2年以内に離婚する夫婦がいかに多いかを表しています。
出産後の夫婦関係の悪化、夫に対する愛情がどんどん薄れてゆく、こんな状態が続くことを産後クライシスと呼ぶのです。
(※)平成23年度全国母子世帯等調査「母子世帯になった時の末子の年齢階級別状況」より
産後クライシスを引き起こす原因
では、産後クライシスを引き起こしてしまう原因とは、どんなものがあるのでしょうか。原因はひとつとは限らず、以下に挙げる様々な問題が絡み合った結果が、産後クライシスの始まりと言えます。
1.体調不良による原因
ママ達は出産という壮絶な大仕事を終えたあと休む暇もなく、24時間体制で赤ちゃんのことを考え、つきっきりでお世話する毎日を送ります。出産による身体的ダメージに加え寝不足の毎日、抱っこなどの赤ちゃんのお世話による背中や腕の痛みも日に日に増していきボロボロの状態です。
2.ホルモンバランスによる原因
妊娠中は女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌量が増えていきます。どちらもお腹の中で赤ちゃんを育てるために必要不可欠なホルモンです。ところが出産後はこのホルモンが急激に減少していきます。
この急激な変化にママの身体が追いつけないため、あちこちに不調が出てくるのです。こうしたホルモンバランスの乱れによる感情の浮き沈みは、理性でコントロールすることはほぼ不可能といえます。
3.パパの貢献度による原因
ママは毎日赤ちゃんのお世話をすることで、「妻」から「母」へと急成長していきます。しかしパパはというと、仕事、友達付き合い、生活サイクルはあまり変化しないようです。
そして、母性本能と女性ホルモンの働きで赤ちゃんのお世話をうまくこなすママに比べ、パパは右も左も分からない育児の初心者です。にもかかわらず、自分と同等の働きを期待してしまうことで「どうして手伝ってくれないの?」「どうして泣いているのに起きないの?」と、イライラした気持ちが溜まってしまいます。
4.精神的不安による原因
出産を機に仕事を辞めたことで社会に取り残されたような気分になる、未婚の友達と会話や感覚が合わなくなってくるなど、様々な精神的不安がママを襲います。さらに真面目なママほど「子どもを立派に育てなければいけない」というプレッシャーと毎日戦うことになります。不妊治療後でやっと出来たお子さんなら尚の事かもしれません。
それまで漠然と持っていた「出産=幸せ」というイメージは、出産後次々に押し寄せる苦労や問題によって一気に崩れ去ります。出産がいかに幸せで楽しいことであるかは一般に語られるのに、その後の苦労など誰も教えてくれません。こうした理想と現実のギャップが、産後クライシスを引き起こす原因となるのです。
産後クライシスを引き起こさないための対処法
対処法1.実家からのサポートを得る
一人で育児も家事も完璧にこなそうとするのではなく、時には親兄弟を頼り手伝ってもらいましょう。赤ちゃんを預けて寝かせてもらったり、不安な気持ちや愚痴を聞いてもらうのも良いでしょう。数世帯が同居していた昔とは違い、核家族が多い今では一人で頑張りすぎてしまうママが多いのです。
対処法2.手伝ってほしいことを言葉で伝える
産後クライシスを引き起こさないための最も重要なポイントは「産後に夫が育児や家事にどのくらい参加したか」ということ。とは言っても、ママが急成長していく反面、パパが今までの生活スタイルを簡単に変えることができず、赤ちゃんのお世話もうまくできない、ということは先にご説明した通り。
赤ちゃんが泣いているのに見ているだけのパパに対しイライラする気持ちを抑え、「オムツを替えてくれたら助かるな」「ミルクをあげてくれない?」と具体的にお願いしてみましょう。
言われればきちんと手伝ってくれるパパは多いはず。「いちいち言わなくても察してよ」という考えはトラブルの元です。して欲しいこと、して欲しくないことを言葉でしっかり伝えることが大切です。早めに帰宅して「今日は一日どうだった?」と聞いてくれるだけでも違いますよね。
対処法3.褒めてやる気を引き出す
家事や育児を手伝ってもらった後、つい「このやり方はダメ」「時間がかかりすぎ」「もうちょっと丁寧にやってよ」などと文句を言ってしまっていませんか?ママから見れば「二人で育児と家事を協力するのは当たり前」と考えがちですが、パパから見れば育児も家事も慣れない大仕事。急にうまくできるはずがありません。
せっかくママのために頑張ったのに文句を言われてしまっては、また手伝おうという気にはなれません。100%の出来ではなくても、「助かったわ、ありがとう」「パパの方が上手だから次もやってくれると嬉しい」など、たくさん褒めてパパのやる気を引き出しましょう。
対処法4.外部のサポートに頼る
どうしても実家やパパを頼れない場合は、お近くの「ファミリー・サポート・センター」や産後ヘルパー、産後ドゥーラさんなどを探してみましょう。会員になれば、子育てを支援してくれる会員を紹介してもらえます。また毎日の負担となる家事は、ロボット掃除機や食洗機などの便利家電に助けてもらい、少しでも休息の時間を増やしましょう。
対処法5.ストレスをこためない
周囲や外部にうまく家事や育児を分担してもらうのが理想です。しかし、手伝ってもらうたびに気を遣うのが疲れる時もありますよね。そんな時は、やるべきことをできるだけ減らし、赤ちゃんより少し早く起きて1人の時間を作ったり、頑張った自分へのご褒美を用意しましょう。
イライラしがちな時は、お部屋にアロマオイルの香りをただよわせるのもいいですね。香りは感情を司る大脳に直接届くため、モヤモヤした気持ちをすーっと晴らしてくれます。
ほんの少しの心の余裕で、相手に対する自分の反応や状況の捉え方も変わってくるものです。ママ自身も上手に気分転換する方法を見つけて、産後クライシスを乗り切りましょう。
最愛のパートナーとして
心身ともにダメージを負いデリケートになった産後のママは、パパの非協力的な態度や心ない言動にいつも以上にショックを受けます。そしてその時の恨みは一生忘れません。逆に言えば、産後2年間にパパが育児や家事にたくさん協力すれば、パパに対する愛情が薄れにくいということです。
また「産後クライシス」とはどのようなものなのか、丁寧に説明して理解してもらうことも大事です。誰しも産後は、心身ともに不安定です。それはホルモンバランスや日々の疲れが原因で仕方のないこと。
日頃の感謝や会話を大切に、イライラも沈んだ気持ちも「そういうこともある」と受け流しながら、産後クライシスを二人で乗り越えていきましょう。
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看護師、助産師、IFAアロマセラピスト、JMHAメディカルハーバリスト、NCA日本コンディショニング協会認定トレーナー
母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
心理カウンセラー
日本産婦人科学会会員その認定医、産婦人科専門医、日本ソフフロロジ学会会員、東京オペグループ会員、日本アロマテラピー学会会員
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