【助産師監修】排卵誘発剤の副作用って?効果とリスクについて
2018.05.25
浅井貴子
助産師
新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。
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排卵誘発剤は不妊治療の現場ではよく使われるお薬ですが、不妊治療を始めたばかりの方や薬を使って治療をしたことがない方なら誰もが不安になると思います。
無理やり排卵させるの?必ず効くの?副作用はないの?などたくさん疑問が出てきますよね。今回は、排卵誘発剤について詳しくお話ししたいと思います。
排卵誘発剤とはどんな薬?
排卵誘発剤とは
排卵誘発剤は、下垂体から分泌される卵胞を育てる働きがある卵胞刺激ホルモン(FSH)を刺激するか、卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)を直接刺激することで、卵胞を育て排卵しやすくさせる薬です。
どんな人に使うの?
無月経や無排卵周期症、散在性排卵周期症、多嚢胞性卵巣症候群などの排卵障害に使用するのはもちろん、黄体機能不全やたくさんの卵胞を育て妊娠率をあげるために人工授精や体外受精の前にも使用します。
また、原因不明の不妊症の場合も使用により妊娠率が上がると報告されています。
排卵誘発剤の種類と使用方法
内服薬:クロミッド錠
飲み薬による排卵誘発剤で、成分はクエン酸クロミフェンといわれるものです。卵胞の発育と排卵を促す薬で、月経周期3~5日目から1日1錠5日間内服します。
内服薬:セキソビット錠
クロミッド錠と作用は同じですが、効果も副作用もクロミッド錠よりは緩やかといわれています。月経周期5日目から1日4~8錠を2~3回に分けて5日~10日間内服します。
注射薬:HMG
卵胞刺激ホルモン(FSH)と同じ作用のある注射薬です。卵巣に直接作用して卵胞を育てる効果があります。内服薬では卵胞が十分に育たない重症例に使用します。
月経周期3~5日目の間に注射をスタートし、1~2週間卵胞の大きさが20mm程度になるまで毎日注射をします。
排卵誘発剤の効果
排卵誘発剤の効果
排卵誘発剤は卵胞を育てる作用と排卵を促す作用があるため、卵胞が排卵に必要な大きさにまで育たない人や排卵しにくい人に有効です。
また、卵巣の働きを整えることで、排卵があっても低温期が長く卵胞が育つのに時間がかかる人や、低温期から高温期への移行に時間がかかる、高温期が短いなどの黄体機能不全の人にも有効といわれています。
きちんと卵胞が育ち、排卵を促すことで妊娠できるチャンスが増えるため、結果、何もしないより妊娠率が上がるというわけです。
排卵誘発剤の副作用
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
卵巣が過剰に刺激されることで卵巣が腫れて、お腹の張りや腹水、胸水、呼吸がしづらさなどの症状が出ることがあります。
軽症の場合は安静でよくなることもありますが、重症になると入院して治療が必要になります。
卵巣過剰刺激症候群はクロミッドなどの内服薬ではあまりおきませんが、より強力なHMG注射による治療ではおこりやすくなります。
排卵誘発剤は人によって感受性が違うため慎重に投与する必要があるのです。
頸管粘液の減少
クロミッドを続けて内服することでおこりやすくなるのが頸管粘液の減少です。
頸管粘液は精子の通過を助けてくれる働きがあるので、頸管粘液の減少がおこった場合はお休みを挟む、エストロゲン製剤と併用するなど治療方針を見直す必要があります。
子宮内膜が薄くなる
クロミッドを続けて内服することでおこりやすくなるもう一つの副作用が、子宮内膜が薄くなることです。
子宮内膜は着床するためには必要不可欠なものなので、妊娠しにくくなる場合はお休みを挟む、エストロゲン製剤を同時に服用する、HMGに切り替えるなど治療方針の見直しが必要になります。
双子や多胎児の確率が上がる
本来、毎月1個しか成熟しない卵胞が排卵誘発剤によって何個も大きくなり複数個排卵することがあります。妊娠率が上がるという反面、多胎妊娠が増えるリスクがあります。
多胎妊娠の確率は自然妊娠で1%未満ですが、クロミッドの内服で5%、HMGの注射では20%にもなるといわれています。
使い続けると効果が薄れてくる
どんな薬でもあることですが、使い続けると反応性が鈍くなります。排卵誘発剤も同じで効果が現れないにも関わらず使い続けるのはリスクがあるといえます。
通常、6周期使っても効果がない場合は、治療方針の見直し、もしくはお休みを挟む必要があるといわれています。
きちんと理解、納得して使用を
排卵誘発剤は必要な方にとってはとても有効な薬です。過剰に恐れることはありませんが、副作用や使い続けることでおこるリスクもあります。
そのため、きちんと理解、納得した上で始めてもらうようにします。説明を十分にしてくれない場合はセカンドオピニオンを求めましょう。
そして大切なことは、不妊治療は焦らないことです。効果がないからといって自己流で薬の量を増やしたり、使い続けたりすることはよくありません。
不妊治療には、主治医の先生の指示と共にお休みするという勇気と時間も必要なのです。
不妊治療をやめたら授かったという話はよくあるものです。「不妊治療不妊」という言葉あるように治療そのものがストレスになり不妊の原因になっている事も少なくありません。
妊娠しやすい体づくりやストレスのない生活、生活習慣の見直しをする時間も大切です。
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母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
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