【助産師監修】妊婦さんの便秘-改善方法や対策について-
2023.11.27
浅井貴子
助産師
新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。
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お腹の赤ちゃんが成長してくれるのはとても嬉しいこと。
それに伴い、ママたちは様々な妊娠中の身体の変化に向き合うことになります。
そんな妊婦さんのマイナートラブルの中で、とても多いのが「便秘」です。
「なんとかしたい」、かといって便秘薬などには頼りたくないですよね。今回は、妊婦さんの多くが抱える便秘の原因と解消法を紹介します。
妊娠初期の便秘の原因 その1
妊娠中のホルモンの影響による便秘
腸のぜんどう運動が低下し、便を下に押し出す力が弱ることで起こるのが「弛緩性(しかんせい)便秘」です。
妊娠をすると、その妊娠を継続するためにプロゲステロンというホルモンが分泌されます。
プロゲステロンには、胃や腸にある筋肉を緩める作用があります。この筋肉が緩まると、消化器官のぜんどう運動(収縮運動)が低下しやすくなります。
その他つわりで食事があまり食べられなくなったり、食事の嗜好が変化することで消化の力が弱まることも原因として考えられます。
妊娠中期~後期の便秘の原因 その2
子宮が大きくなることで起こる便秘
妊娠によって起こる便秘の一つに、「直腸性便秘」があります。これは子宮の中で赤ちゃんが大きくなるにつれて、その子宮が大腸を圧迫してしまうことで起きます。
大きくなった子宮の影響で、妊娠後期になると小腸や大腸は背中の方に移動をします。そのためいつもより大腸で便が進みにくくなり、便の水分が必要以上に吸収されてしまうことで便秘になりやすくなってしまうのです。
便秘解消法 その1
毎朝決まった時間にトイレに行く習慣をつくる
お仕事をされている妊婦さんは時間に余裕を持って起床し、朝食時に冷たい牛乳やミネラル分が多い硬水を合わせて飲みます。
水分不足でも便秘になりますのでノンカロリーのものであれば量を制限せずに飲用できます。
朝食後は胃腸が刺激されてぜんどう運動が起こるので、その後トイレに行くようにすると排便が習慣化しやすくなります。
食事の内容を見直す
つわりで食事の嗜好の変化がある時は無理をする必要はありませんが、食品の中でもなるべく精製されていない物を選ぶようにしましょう。
例)
雑穀米・玄米・発芽米
ライ麦パン・雑穀パン
精製されていない食品には繊維質やミネラルが多く含まれているので、白米を玄米に変えるなど、主食を変えるだけで便秘が良くなったという妊婦さんは多くいます。
他に根菜類、豆類など食物繊維の多いものは便秘に良いのですが、それらは「不溶性食物繊維」と言われるものです。摂り過ぎるとガスが発生し、妊婦さんはお腹が苦しくなりやすいので、「水溶性食物繊維」が含まれる食べ物もバランスよく取りましょう。
例えばところてんやこんにゃくゼリー、海藻類などは便の水分も増えるよい食材です。
▼不溶性食物繊維
穀類・豆類・根菜類
▼水溶性食物繊維
こんにゃく・海藻類
妊娠中に良い食べ物は「妊娠中に良い食べ物・食べ方」をご参照ください。
身体を温める
身体が冷えていると腸のぜんどう運動が低下してしまうので、半身浴やフットバスなど身体を温めるのもおすすめです。
夏場になるとシャワーで済ませてしまう妊婦さんもいますが、のぼせない程度のお湯にゆっくり入り身体を温めましょう。
便秘解消法 その2
便秘に効くヨガのポーズ
1.ひねりのポーズ(仰向け)
膝を立て、仰向けに寝る→息を吐きながら、上半身を左右交互にゆっくり倒す
2.ひねりのポーズ(立位)
・肩幅ぐらいに足を開いて立つ
・右足を後ろにずらし、息を吐きながら身体を右側にひねる
・息を吸いながら元に戻る→左足も同じように行う。
★視線を斜め上方にするとより効果的
3.稲穂のポーズ(体の側部を伸ばす)
壁や椅子の背を持ち、ゆっくりと息を吐きながら身体の横を伸ばします。
妊娠中に動かすことが少ない部分なので、ぜひ試してみましょう。
便秘解消法 その3
適度な運動をする
1.ウォーキング
しっかりと地面を踏みしめて歩くことで、骨盤が揺れて腹筋が刺激され、便秘に効果があります。
2.マタニティスイミング
妊娠中は動きが制限されがちですが、その中で唯一腹ばいになることができる運動です。浮力の中で思い切り身体を動かすこともできます。クロールの息継ぎ・背泳ぎ・バタフライには背筋を使う動きが多く含まれているので、背中側にある腸を刺激してくれます。
3.拭き掃除
意外に思われる方もいますが、掃除も立派な運動になります。その中でも特に窓拭きや四つん這いでの拭き掃除は効果的です。両腕を伸ばすので背筋を沢山使い、スイミング同様、背中側にある腸を刺激することができます。
便秘解消法 その4
ツボを押す・マッサージを行う
▼ツボ押し
■「神門(しんもん)」
腸のぜんどう運動を活発にします。
■「大腸愈(だいちょうゆ)」
下半身の緊張をほぐし、大腸の働きを調整します。便秘の場合は左大腸愈が硬くなっていることが多いので、重点的にほぐしましょう。
■「土踏まず」
土踏まずには小腸と大腸の反射区(末梢神経の集中箇所)があるので、ここを刺激すると腸の働きが活発になります。
▼マッサージ
妊娠中は腸が背中側に来ていることが多いので背中もマッサージしましょう。腹部のマッサージは時計回り、背中のマッサージは反時計回りに行います。
便秘解消法 その5
それでも出ない時は…
それでもなかなか出なかったり、他の方法を毎回試すのが手間な場合は、
ハーブティーを試してみるのも良いでしょう。ノンカフェインで妊婦さんにも安心な上、朝のスッキリに嬉しいハーブがたくさんあります。
<ローズヒップ>
ハーブの中でも、特に期待できると言われているのがローズヒップです。ローズヒップに含まれるビタミンCは、レモンの約20倍。
ビタミンCの多くは吸収されますが、吸収されなかったものは大腸まで届き、乳酸菌などの善玉菌を増やしたり、便をやわらかくしてくれる作用があります。それに加えてペクチンという水溶性の食物繊維も含まれているため、ローズヒップは便秘に悩む妊婦さんにおすすめです。
<ハイビスカス>
ハイビスカスにはクエン酸が豊富に含まれています。クエン酸は、腸のぜんどう運動を活発にしてくれるため、便が出やすくなると言われています。ほかに、腸内の悪玉菌を殺菌して腸内環境を整えてくれる効果もあります。
<たんぽぽコーヒー>
緩下作用といい、緩やかに便通を促してくれる働きがあります。
<ジンジャー>
体をポカポカにしてくれ、腸のぜんどう運動を活発にしてくれます。
それらが全て入ったハーブティーもあるので、自分にあったものを上手に活用してみましょう。
お腹の赤ちゃんのためにも、つらい便秘を解消して快適な妊婦生活を送りましょう。
妊娠中のマイナートラブル「腰痛」にお悩みの方は「助産師が教える!妊娠中の腰痛-原因と対処法-」をご参照ください。
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母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
心理カウンセラー
日本産婦人科学会会員その認定医、産婦人科専門医、日本ソフフロロジ学会会員、東京オペグループ会員、日本アロマテラピー学会会員
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