出産準備

【助産師監修】男性の育休。当たり前に育休がとれる社会になるには?

2019.05.28

Yoneco Oda

Mama writer

2010年生まれと2016年生まれの姉妹を育児中のママです。おっとりマイペースな姉と、好奇心旺盛でパワフルな妹。姉妹でも性格の違う二人の様子に、子育ての新鮮さや面白さを感じている今日この頃です。

浅井貴子

助産師

新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。

イクメンという言葉に代表されるよう、近年、男性の育児参加が進んできていますが、「育休」をとるという男性は、まだまだ少数派ではないでしょうか?

少しずつ増加はしてきていますが、男性の育休の現状はどのようになっているのでしょうか?

今回は、男性の育休について、育児休暇と育児休業の違い、その内容や取得の条件、取得できる期間、どれくらいの割合でとれる会社があるのかなどをご紹介します。

育児休暇と育児休業の違い


育休には「育児休暇」と「育児休業」があります。

この2つは名前はよく似ていますが、内容はかなり異なりますので育休について考える場合はまず、これらの違いをしっかりと理解しておくことが大切です。

育児休暇

育児をするために休暇を取得すること。または、休暇中に育児をすること。法律に基づいて取得するものではないので、権利の保障や給付制度はありません。

育児休暇は多くの企業で採用されていますが、休暇扱いなので基本的にはお給料は出ません。

育児休業

「育児・介護休業法」によって定められた休業制度の一つ。子どもを育てる労働者が一定の条件を満たしていれば取得できます。

様々な権利が保障されていて、休業中は雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

育児休業は法律により定められている労働者の権利ですので、取得の条件を満たしていれば会社に規定がなくても、申し出ることで育児休業の取得ができます。

育児・介護休業法では、育児休業の申し出や取得を理由に企業側の解雇や異動、降格や減給などの不利益な取り扱いを禁止しています。

そのため、もし不当な扱いを受けた場合は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談することができますよ。

育児休業はどのようなもの?

取得の条件、取得期間

育児休業の取得は、原則として1歳に満たない子を養育する労働者(正社員、派遣社員、1年以上の勤務実績があるパート社員など)が対象となります。

一定の条件を満たしていれば有期契約の労働者も取得可能です。

休業期間は、原則として子どもの1歳の誕生日の前日までとしていますが、1歳を超えても保育所などに入れないなどの特別な理由がある場合は、最長2歳まで延長することができます。

また、配偶者が専業主婦・主夫であったり、育児休業中でも取得できます。

法改正でパパにうれしい制度も

男性が育児休業を取得しやすくなるように、育児・介護休業法が改正され新制度が設けられました。

<パパ休暇>
育児休業の取得回数は、原則として1人の子どもにつき1回と決まっています。

ですが、ママの出産後8週間以内の期間内にパパが育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度パパが育児休業を取得できます。

<パパ・ママ育休プラス>
育児休業の期間は、原則として子どもの1歳の誕生日の前日までですが、両親が共に育児休業を取得する場合は、パパとママの休業期間をずらして、子どもが最大1歳2ヶ月に達するまでに延長されます。

(厚生労働省HP育児・介護休業法のパンフレットより)

給付金がもらえる


育児休業は法律により定められている休業制度なので、休業期間に「育児休業給付金」を受け取ることができます。

育児休業期間中にお給料の支払いがないなどの一定の条件を満たせば、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

・育児休業開始から180日目(6ヶ月目)まで:休業前の月給の67%
・育児休業開始から181日目以降:休業前の月給の50%
※月給は残業代なども含み、休業開始前6ヶ月の平均の金額

夫婦で育児休業を取得する場合、どちらにも支給されます。育児休業給付金は非課税なので、所得税はかかりません。

また、社会保険料は免除されます(企業の負担分も同様に免除)。お給料の所得がないので、雇用保険料も生じません。

どれくらいの企業で育休がとれている?


現在、日本の企業ではどれくらい男性の育児休業取得が進んでいるのでしょうか?

厚生労働省の調査によると、男性の育児休業取得率が最も高い業種は「金融業、保険業」の15.76%、続いて「情報通信業」の12.78%となっています。

(厚生労働省 平成29年度雇用均等基本調査より)

女性が多く働く企業では、すでに女性の育児休業取得が進んでいるため、男性の取得を進めようとする会社が多いようです。

また、2017年度の男性の育児休業取得率の高い会社ランキングによると、ランキング1位になった3社は、取得率100%で、子どもが生まれた男性社員全員が育児休業を取得しています。

男性の育児参加を積極的に後押ししている企業が増えてきていることがうかがえますね。取得日数を見てみると、今のところ1週間以内の短期間取得が多いのが現状です。

男性の育児休業取得を肯定的に受け入れられる会社は、社員の子育て支援体制も整っていることが多いので、今後、長期間の取得者が増えていくことも期待できますね。

なぜ少ない?男性の育休。


現在の日本の男性の育児休業取得率は、5.14%と過去最高の取得率となっていますが、世界的に見ると、かなりの低水準です。

同じ調査での女性の育児休業取得率は83.2%なので、男女で取得率に大きな格差があることが分かります。

しかも、男性の取得者の5割以上は、取得日数が「5日未満」と短期間の取得にとどまっています。

これを聞くと、世間一般のパパ達は育休に関心がないのかと思いがちですが、子どものいる男性のうち30%が「1ヶ月以上の育休を取りたかった。」と答えたという調査結果もあります。

男性が育休をとらなかった理由としては、「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だったから」、「会社や職場の理解がなかったから」、「業務が繁忙だったからなどの声が。

中には、「会社で育児休業制度が整備されていなかったから」、「制度について十分わかっていなかったから」などの回答もあります。

職場の育休への理解不足、仕事の都合がつかない、本人の育休の知識不足などの様々な要因があるようです。

子どもを出産した当事者ではない男性が、積極的に育休を申請できる環境が、今の日本ではなかなか整っていないという現状が見えてきますね。

ですが、ある住宅メーカーは出産した妻がいる家庭のパパは強制的に1ヶ月育休を取る事が決められています。

企業側が制度を作っているところはごくわずかですが、以前に比べたら増えてきています。


当たり前に男性が育休をとれるような社会になるためには、法制度を整えるだけは不十分です。

企業側の理解や取得のための環境の整備、男性自身が育休取得への意識を持つことが大切なのではないかと思います。

男性が進んで育休をとりやすい環境が整って、女性も男性も働きながら子育てしやすい社会になるといいですね。

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