【医師監修】乳腺炎とは?症状と対策、 また予防方法とは?体験談あり
2020.01.08
監修 牛丸敬祥
産婦人科医
長崎大学病院では研修医、医員、助手、講師として勤務。その他、医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立嬉野病院産婦人科部長、長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科.婦人科うしまるレディースクリニック院長、などを歴任。現在まで20,000例以上の出産を経験。医療法人ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
kanaママ
看護師ライター、マムライフデザイン代表。
総合病院の産婦人科に勤務し、妊娠合併症、胎児病、心疾患や脳血管疾患などの合併妊娠、多胎妊娠などさまざまな症例を経験。
現在、医療情報サイトや妊娠・出産・育児情報サイトなどにて記事を多数執筆中。子育てママを応援するブログも開設中。
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母乳育児中のママに知っておいて欲しいのが『乳腺炎』です。
おっぱいにしこりができたり、部分的に赤くなったり、押すと痛むなんてことはありませんか?乳腺炎は、なりかけている時や初期にどう対処するかが重要です。
乳腺炎について、その症状や対処法を一緒に見ていきましょう。
乳腺炎とは?
乳腺炎は、授乳中のママを悩ませるおっぱいの病気です。おっぱいの中は、母乳を作る「乳腺葉」と母乳を運ぶ「乳管」があり、この2つを合わせて「乳腺」といいます。
この乳腺の中で炎症が起きた状態が、「乳腺炎」になります。乳腺炎は、「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」の2種類に分けられ、その原因や症状が違ってきます。
まずは、どういう症状がでてきたら「乳腺炎」なのかをみていきましょう。
乳腺炎の症状とは
授乳中はなんとなく授乳後もおっぱいがすっきりしない、乳頭の傷がなかなか治らず痛い、部分的にしこりがあるように感じる…などおっぱいの悩みや心配が尽きないですね。
そんな症状の中で気を付けたいのが、乳腺炎の兆候や乳腺炎になった時の症状です。
これらの原因や症状を知っておくことで、もしもの時に適切な対処ができますので、ぜひチェックしておきしょう。
乳腺炎の兆候?なりかけの時の症状とは
乳腺炎になりかけている症状として
・授乳後も授乳前のような張った感じが続く・すっきりしない
・授乳後もおっぱいにできたしこりが取れない
・乳頭に傷や水疱、白斑(乳頭に白い塊が付き出口をふさいだ状態)ができている
・授乳後もおっぱいに熱感がある
以上、4つが挙げられます。
これらの症状がある場合には、乳腺炎になる可能性がありますので、注意が必要になります。
次に乳腺炎の種類である「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」をみていきましょう。それぞれで対処方法が違います。
■うっ滞性乳腺炎とは(原因と症状)
うっ滞性乳腺炎とは母乳が乳腺(母乳を作る部分と運ぶ部分)に溜まりすぎることで発症する乳腺炎です。出産後、脳からは母乳を作るように指令が送られ、おっぱいはどんどん張っていきます。
作られた母乳がすぐ出せれば問題ありませんが、初産婦さんで乳管(母乳の通り道)が開通していなかったり、赤ちゃんの哺乳力が弱い場合、おっぱいの張りがひどくなり、がちがちの岩のような状態になることもあります。
このように、出す量に対しておっぱいが作られすぎている状態が原因で、「うっ滞性乳腺炎」になります。
主に、出産後数日の間に起こりますが、授乳間隔の空きすぎや疲労・ストレスの溜まりすぎ、卒乳時、片乳のみの授乳を続けた場合などにおきることがあります。
症状としては、下記の3つが挙げられます。
・おっぱい全体の腫れや赤み
・おっぱいの痛み、熱感
・おっぱいのしこり
(押すと痛い場合が多い)
うっ滞性乳腺炎によって乳腺内に溜まった母乳は、細菌にとって絶好の増殖場所になるため、次に紹介する「化膿性乳腺炎」を引き起こす原因になってしまいます。
■化膿性乳腺炎とは(原因と症状)
乳頭から細菌が感染することで発症する乳腺炎です。
乳頭は、赤ちゃんの浅吸い(乳頭の根本まで咥えられていない状態で吸われること)や乳頭の柔らかさが足りないことが原因で亀裂や水疱ができたり、乳歯が生えた赤ちゃんが噛むことで傷ができたりと、授乳中は傷つきやすい場所になります。
このようにできた乳頭の傷から細菌が侵入し、乳腺に溜まった母乳内で増殖、炎症を起こした状態が原因で化膿性乳腺炎になります。
症状としては、下記の5つが挙げられます。
・おっぱいの腫れ、熱感、しこり
・おっぱいの強い痛み
(特に押さえると痛みが強い)
・38.5℃以上の高熱
・悪寒
・インフルエンザの時のような身体の痛み
(頭痛や関節痛など)
これらの症状がある場合には、すぐに病院を受診しましょう。
化膿性乳腺炎が悪化すると、乳房膿瘍(にゅうぼうのうよう)というおっぱいの中に膿が溜まる状態になり、外科的な治療が必要になるケースもあります。
また、化膿性乳腺炎は感染症ですので、稀に感染が全身に広がり、重篤な状態になることがあります。
乳腺炎かも?と思った時の対処方法
乳腺炎が疑われる場合には、早めの対処が大切になります。その方法を見ていきましょう。
■うっ滞性乳腺炎の対処方法
産後すぐに起きる「うっ滞性乳腺炎」の場合
乳管の開通を促して、母乳をしっかり出せる状態にすることが大切です。そのために、赤ちゃんにしっかり吸ってもらいましょう。
最初は赤ちゃんの抱き方が不慣れだったり、赤ちゃん自身もうまく吸えないため、助産師や看護師に介助してもらうと安心です。
また、その際におっぱいの状態をチェックしてもらうことも大切です。
乳管の開通状態や分泌量をチェックしてもらい、乳管開通マッサージや搾乳などのケアを行ってもらうことで、おっぱいの状態が楽になることが期待できます。
もし乳輪部がパンッと張っている場合には、軽く搾乳してから赤ちゃんに吸わせてあげましょう。
乳輪部が張ったまま授乳すると、浅吸いになりやすく、乳頭がヒリヒリしたり傷ができやすくなります。
乳頭の傷は、化膿性乳腺炎の原因にもなるため、できるだけ乳頭に負担のかからない方法で授乳するようにしましょう。
授乳を頑張ってもおっぱいが張って痛くて寝れないという場合は、おっぱいを冷やしましょう。やわらかめの保冷剤をタオルで包み、おっぱい全体を冷やすと痛みが和らぎます。
ただ、冷やしすぎると母乳の分泌が悪くなることがありますので、短時間にしておきましょう。
ある程度分泌が増えてきてから「うっ滞性乳腺炎」になった場合
授乳間隔が空いたり、片乳だけ授乳が集中したり、寝不足が続いたりすると、うっ滞性乳腺炎になることがあります。
この場合、しこりができているケースが多いため、授乳中はそのしこり部分を乳頭方向に向けて優しく圧迫しましょう。
また、症状のある方のおっぱいから先に吸わせることが大切です。
赤ちゃんの吸う向きによって残りやすい部分が出てくるため、抱き方を変えるのも大切です。
赤ちゃんの抱き方は横抱きや縦抱き、フットボール抱きなどもあるので試してみましょう。
産後は赤ちゃんのお世話で睡眠不足・疲労困憊になりがちですので、できるだけ休めるときに休むことが大切です。
湯舟に浸かっていい許可が出たら、シャワーだけではなくできるだけ湯舟に浸かる時間を作りましょう。血行が促進され、疲労回復だけでなく、母乳の出も良くなります。
症状が数日続き改善しないようであれば、産婦人科や助産院の母乳外来に行ってみましょう。
■化膿性乳腺炎の対処方法
化膿性乳腺炎が疑われる場合は、すぐに病院を受診しましょう。
化膿性乳腺炎は、時間の経過によって細菌の感染が広がるほど症状がひどく、治るのに時間がかかるようになります。
原因菌に合った抗生剤や消炎鎮痛剤などが処方されますので、必ず用法用量を守って内服しましょう。抗生剤は症状が治まっても必ず飲みきることが大切です。
医療機関に行く際には、何科を受診する?
乳腺炎が疑われる場合には、何科に受診すればいいのでしょうか?
答えは、産婦人科や乳腺外科、乳腺外来などになります。
受診の際には、事前に電話で相談しておくと、診察やケアがスムーズに受けられます。保険証やお薬手帳、母子手帳を忘れずに持っていくようにしましょう。
乳腺炎の時、授乳はしてもいい?
うっ滞性乳腺炎の場合は、どんどん授乳しましょう。授乳することで症状が改善されます。
ただ、睡眠不足や疲労で授乳が辛い場合には、搾乳しておいて、授乳はパパや家族に任せましょう。
搾乳した母乳は、冷蔵庫(4℃以下)で3日間、冷凍庫(-18℃以下)で6ヶ月間保存できます。搾乳機は手動式や電動式のものがあるので、必要に応じて購入しましょう。
化膿性乳腺炎の場合は、受診して医師の指示に従いましょう。状態によっては、授乳を中止する必要があります。
乳腺炎の原因と予防方法とは?
乳腺炎は、疲労やストレス、偏った食事が原因になります。これらを解決するには、家族の助けはもちろんですが、外注できるところは外に頼みましょう。
まず、家事の大部分を占めるのが食事ですね。産後の食事は、母乳にも反映され赤ちゃんの栄養にも影響するので、しっかり栄養バランスの整った食事を摂りたいところです。
乳腺炎を予防するためにも、血行が滞るような脂質多めの食べ物ではなく、和食が理想的ですが、自分で作るのはなかなか負担が大きいですね。
パパが料理できるのが理想的ですが、それが無理な場合には宅食や家事代行サービスを依頼するのもひとつです。
自治体によっては、産後ヘルパーの派遣を低料金で依頼できたり、産後院の利用ができるところもあります。ママがゆっくり産後を過ごせる環境を整えておきたいですね。
乳腺炎になった方の体験談
それは娘を旦那さんにお願いして日中お出かけをした次の日の朝、おっぱいの痛みで目が覚め、慌てて娘に飲んでもらうも、張りすぎて娘もうまく飲めず…。
寒気でガタガタ震え、病院に着いて、熱を測ると39度超え。
先生に乳腺炎だと言われ、出産に次ぐほどの激痛のマッサージで母乳を出して薬を飲んで、ようやく一息つけました…。もう二度となりたくありません。(はるかさんの場合)
【関連する記事】
●インタビュー
つらい乳腺炎にもなりましたが、3人の寝顔を見ると忘れちゃいます
●座談会
【おっぱい会議・前編】授乳中の50%のママが直面する辛い『乳腺炎』ってどんなもの?
参照文献:
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看護師、助産師、IFAアロマセラピスト、JMHAメディカルハーバリスト、NCA日本コンディショニング協会認定トレーナー
母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
心理カウンセラー
日本産婦人科学会会員その認定医、産婦人科専門医、日本ソフフロロジ学会会員、東京オペグループ会員、日本アロマテラピー学会会員
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押すと痛いし、しんどいけど、とにかく水分を摂って右から授乳してなんとか翌日にはしこりが取れ、解熱しました。
もしあのまま熱が続いていたらと思うとゾッとします。(みさとさんの場合)