【医師監修】乳腺炎予防のために、 自宅でできる対処とマッサージ方法
2020.03.03
監修 牛丸敬祥
産婦人科医
長崎大学病院では研修医、医員、助手、講師として勤務。その他、医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立嬉野病院産婦人科部長、長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科.婦人科うしまるレディースクリニック院長、などを歴任。現在まで20,000例以上の出産を経験。医療法人ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
kanaママ
看護師ライター、マムライフデザイン代表。
総合病院の産婦人科に勤務し、妊娠合併症、胎児病、心疾患や脳血管疾患などの合併妊娠、多胎妊娠などさまざまな症例を経験。
現在、医療情報サイトや妊娠・出産・育児情報サイトなどにて記事を多数執筆中。子育てママを応援するブログも開設中。
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乳腺炎を予防する方法の1つに、おっぱいのマッサージがあります。授乳前にママが行うだけで、赤ちゃんの飲みもよくなり、授乳後におっぱいがすっきりしていることでしょう。
その方法について詳しく見ていきましょう。
乳腺炎のしこりとは、どういう状態?
おっぱいを触ってみて、部分的に塊が触れたらそれがしこりです。授乳期間中のおっぱいのしこりは、乳腺炎に関連している可能性が高いです。
■乳腺炎とは
おっぱいを作り、運ぶ役割を持つ乳腺(小葉と乳管)に炎症が起きた状態が乳腺炎です。乳腺炎は、おっぱいにしこりができたり、痛みがあったり、発熱することもあります。
■乳腺炎はうっ滞性乳腺炎と化膿性乳腺炎の2種類あります。
乳腺炎は、うっ滞性乳腺炎と化膿性乳腺炎の2種類があり、どちらもおっぱいにしこりができます。
うっ滞性乳腺炎は、母乳が溜まりすぎた状態(うつ乳)で、出産後すぐや授乳時間が空きすぎたり、乳腺に詰まりがある状態のときなどに起こりやすいです。断乳(卒乳)のときも注意が必要になります。
化膿性乳腺炎は、うっ滞性乳腺炎から細菌感染を起こした状態で、高熱や強いいたみなどの症状が特徴です。
これらの状態はできるだけ避けたいですね。そのためには予防が大切になります。
乳腺炎を予防するためのマッサージ方法
乳腺炎は、おっぱいの溜まりすぎが原因の1つになります。このおっぱいの溜まりすぎは、赤ちゃんがおっぱいをしっかり吸うことで予防できます。
しかし、おっぱいがカチカチに張っていたり乳頭が硬いと、赤ちゃんはおっぱいをうまく吸えません。そこで、授乳前におっぱいの基底部(おっぱいと大胸筋の境目)マッサージと乳頭マッサージをすることが勧められます。
やり方としては下記の通りになります。
※乳腺炎予防のためのマッサージですので、すでに乳腺炎の兆候が見られる方は悪化する可能性がありますので行わないでください。
■基底部マッサージ
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<側面から>
①マッサージしようとするおっぱいの反対側の手を「パー」にした状態で、おっぱいの側面に手を当てます。
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②マッサージする側の肘を真横に突き出し、手首を反らせて、①の手に当てます。このとき、指は顔側に向けて、親指の付け根あたりを当てることを意識しましょう。
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③肘を中心に上下に動かすと、基底部が動かされます。おっぱいの付け根部分を動かすことを意識して、ゆっくり力をこめて3回行いましょう。
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<斜め下から>
①マッサージしようとするおっぱいの反対側の手を指を揃えた状態で、おっぱいの外側の下方向(時計でいうと4時か8時方向)に当てます。
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②マッサージする側の肘を真横に突き出し、手首を反らせて、①の手に当てます。このとき、指は下に向けて、小指の付け根あたりを当てることを意識しましょう。
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③肘を中心に上下に動かすと、基底部が動かされます。おっぱいの付け根部分を動かすことを意識して、ゆっくり力をこめて3回行いましょう。
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<下から>
①マッサージしようとするおっぱいの反対側の手を指を揃えた状態で、おっぱいの下側に当てます。
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②マッサージする側の肘を真横に突き出し、手首を曲げないで、①の手に当てます。
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③肘を中心に上下に動かして、おっぱいをすくいあげるようにします。おっぱいの付け根部分を動かすことを意識して、ゆっくり力をこめて3回行いましょう。
■乳頭マッサージ
乳頭マッサージは、最初は刺激に慣れず痛いかもしれませんが、繰り返すことで痛みが少しずつ減るため、慣らしていきましょう。マッサージの仕方は下記のとおりです。
①マッサージしようとするおっぱいの反対側の手で、おっぱいを下から支えます。
②マッサージする側の親指・人差し指、中指の3本で乳輪部または乳頭をつまみます。
③3秒(硬い場合は5~10秒)かけて少しずつ圧を加えつつ圧迫します。圧迫は、指の位置を変えながら、乳輪部または乳頭全体を圧迫しましょう。
④乳頭・乳輪部をつまみながら、横方向にもみずらします。
⑤つまんだ状態で、縦方向にも、もみずらします。
このマッサージを授乳前に行うことで、おっぱい全体が柔らかくなり、赤ちゃんがのみやすいおっぱいになります。また、乳頭マッサージは妊娠中から行うことが勧められます(切迫兆候ある場合は×)。
桶谷式などの乳房マッサージ法は、熟練の助産師がおっぱいの状態に合わせて行うため、自宅で予防的にマッサージをする場合は上記の方法でやってみましょう。
もしマッサージで激痛を感じる場合は、乳腺炎や乳頭トラブル(乳首の噛み傷や水疱など)の可能性もありますので、病院を受診しましょう。
■マッサージのメリット
ご紹介したおっぱいのマッサージを行うことで下記のようなメリットがあります。
・おっぱいが飲みやすくなる
・おっぱいの分泌がよくなり、母乳量がアップする
・赤ちゃんが快適に飲めて飲み残しが少なくなる
・乳腺炎の予防に繋がる
■マッサージのデメリット
下記のようなデメリットもあります。
・間違った方法を行うと悪化する
・すでに乳腺炎が疑われる場合は、自己判断で行うと悪化する可能性がある
マッサージ以外に自宅できる対処方法5つ
マッサージ以外でも、乳腺炎を予防する方法があります。詳しく見ていきましょう。
①食事内容を見直す
食事は朝昼晩の3回摂りましょう。医学的根拠はないとされていますが、母乳育児中は、ジャンクフードやスイーツなどの高脂肪・高カロリーな食べ物は避けたほうが安心です。
具だくさんの温かいお味噌汁を飲むと、栄養を多く摂ることができ、血行も良くなります。
②授乳時の抱き方(授乳姿勢)を変えるよう意識する
授乳時に横抱きにしている方が多いですが、同一姿勢での授乳が続くことは避けたほうがいいです。
赤ちゃんの下唇に当たる部分がよく吸われる部分なので、縦抱きやフットボール抱きに変えることで、いろいろな方向の乳腺から母乳を分泌でき、しこりの予防に繋がります。
③葛根湯を飲む
乳腺炎の初期には葛根湯が効果的です。おっぱいがなんとなく張った感じが続いたり、熱感が強いなどの場合には内服してみましょう。
④授乳前に乳頭や乳輪部を温める
乳頭や乳輪部を温めることで、母乳が出やすくなります。授乳前に、温かく絞ったタオルなどで温めてみましょう。
⑤授乳間隔を3時間以上空けすぎない
授乳間隔の空けすぎは、母乳の溜まりすぎに繋がります。授乳間隔が3時間以上にならないように、いつ授乳したか記録すると安心です。
傷や痛みなどの乳頭トラブルによって授乳が難しい場合には、搾乳をすることが勧められます。
病院に行くタイミング、処置内容は? 医療控除は効く?
しこりや発熱、痛み、赤み、熱感などの異常が24時間以上なくならない場合には、助産院や産婦人科、母乳外来などの医療機関を受診することが勧められます。
特に高熱(38.5度以上)が出たり、寒気や吐き気がある、おっぱいの痛みがひどいなどの場合には、化膿性乳腺炎が疑われるため、早急に病院を受診し治療を受けましょう。
産婦人科や女性外来、乳腺外科、乳腺外来などで診察を受けられますが、事前に電話で相談しておくとスムーズです。
乳房マッサージなどのおっぱいケアは保険適応外の場合が多いですが、施設基準を満たした病院では「乳腺炎重症化予防ケア・指導料」という保険算定ができるため、3割負担で済むところもあります。
保険適応外でも医療費控除の対象にはなっていますので、領収書は必ずとっておくようにしましょう。
自己流でマッサージした方の体験談
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参照文献:
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看護師、助産師、IFAアロマセラピスト、JMHAメディカルハーバリスト、NCA日本コンディショニング協会認定トレーナー
母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
心理カウンセラー
日本産婦人科学会会員その認定医、産婦人科専門医、日本ソフフロロジ学会会員、東京オペグループ会員、日本アロマテラピー学会会員
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そのため、しこりができ…第二子の授乳の際もそのしこりが障害になりました。
その後も1ヶ月に1度のペースで発熱を繰り返し、そこから母乳外来に頻繁にかかりました。疲れが溜まったり夜中寝過ごして授乳間隔が開かないようにと気を付けていましたが、なかなか難しく。今では何かあるとすぐに母乳外来に行くようにしています。