【医師監修】乳腺炎の症状とは? しこり・熱・頭痛・高熱・白斑について。体験談あり。
2020.02.03
監修 牛丸敬祥
産婦人科医
長崎大学病院では研修医、医員、助手、講師として勤務。その他、医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立嬉野病院産婦人科部長、長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科.婦人科うしまるレディースクリニック院長、などを歴任。現在まで20,000例以上の出産を経験。医療法人ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
kanaママ
看護師ライター、マムライフデザイン代表。
総合病院の産婦人科に勤務し、妊娠合併症、胎児病、心疾患や脳血管疾患などの合併妊娠、多胎妊娠などさまざまな症例を経験。
現在、医療情報サイトや妊娠・出産・育児情報サイトなどにて記事を多数執筆中。子育てママを応援するブログも開設中。
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母乳育児中のママに知っておいて欲しいのが『乳腺炎』です。おっぱいにしこりができたり、部分的に赤くなったり、押すと痛むなんてことはありませんか?
乳腺炎は、なりかけている時にどう対処するかが重要です。乳腺炎について、その症状や対処法を一緒に見ていきましょう。
乳腺炎とは?
授乳中のママを悩ませるおっぱい(乳房)の病気と言えば、乳腺炎です。
おっぱいを作り、運ぶ役割を持つ乳腺に炎症が起きた状態で、うっ滞性乳腺炎と感染性乳腺炎の2種類に分けられ、その原因や症状が違ってきます。
産後すぐにおっぱいがガチガチに張って痛くなるのも、押すと痛みのあるしこりができて発熱などの症状が出るのも、乳腺炎が関係しています。
乳腺炎は、重症になると入院が必要になることもあるため、できるだけ早い対処が必要になります。
■うっ滞性乳腺炎と感染性乳腺炎について
乳腺炎は、うっ滞性乳腺炎と感染性乳腺炎の2種類に分けられます。
うっ滞性乳腺炎は、母乳が乳腺に溜まりすぎることで発症します。産後すぐの時期に、母乳の生産と分泌のバランスが取れないために起こることもあり、感染性乳腺炎を引き起こす前段階とも言える状態です。(ただし、全てのうっ滞性乳腺炎が感染性になるわけではありません)
感染性乳腺炎は、うっ滞性乳腺炎から12~24時間以内に症状が改善されず、乳頭などにできた傷から細菌が感染することで疑われる症状です。細菌にとって、母乳が溜まった乳腺内は、増殖に適した場所になります。稀に、感染が全身に広がり、命に危険が及ぶこともあるため、早急な対応が必要になります。
■乳腺炎の具体的な症状とは
乳腺炎になりかけているときの症状や、各乳腺炎の症状をご紹介します。
<なりかけている時の症状>
・授乳後も授乳前のような張った感じが続く・すっきりしない
・授乳後もおっぱいにできたしこりが取れない
・乳頭に傷や水疱、白斑(乳頭に白い塊が付き出口をふさいだ状態)ができている
・授乳後もおっぱいに熱感がある
<うっ滞性乳腺炎>
・おっぱい全体の腫れや赤み
・おっぱいの痛み、熱感
・おっぱいのしこり
(押すと痛い場合が多い)
・発熱(37.5℃以上)
<感染性乳腺炎>
・発熱
・おっぱいの腫れ、熱感、しこり
・部分的にくさび形になっている
・おっぱいの強い痛み
(特に押さえると痛みが強い)
・吐き気、悪寒
・インフルエンザの時のような身体の痛み
(頭痛や関節痛、筋肉痛など)
・脈拍の増加
・症状が出ているおっぱいからの授乳を嫌がる
(おっぱいのナトリウム濃度が上昇するため、塩味が増す)
感染性乳腺炎は、風邪やインフルエンザと間違いやすいですが、おっぱいの症状があれば乳腺炎を疑い、またうっ滞性乳腺炎の症状が出てから24時間以上経過しても改善が見られない場合は、感染性乳腺炎の可能性を疑ったほうがよいでしょう。
乳腺炎における「しこり」とは
しこりは、おっぱいの一部に塊を感じる事が多いです。なんらかの原因で、母乳が乳腺内にうっ滞(出せずに溜まった状態)することで起きます。
■しこりを触診で判断する方法
おっぱいの一部にしこりを感じた場合、まずその場所を触って、大きさや痛みがないかを確認しましょう。
うっ滞性乳腺炎の場合、押すと痛みが出る場合が多く、感染性乳腺炎になるとなにもしなくても痛みが出ます。
乳がんを心配される方もいますが、乳がんの場合、一般的にしこりは硬く、境目がはっきりしないことが多いです。
■「しこり」の対処方法(マッサージの仕方など)
うっ滞性乳腺炎のしこりの取り方としては、乳房をマッサージしながら頻回授乳を行いましょう。
授乳間隔は3時間以上空かないようにこまめに授乳します。その際にしこりのある部分を、母乳を乳頭の方向へ押し流すイメージで、手で圧迫するようにしましょう。
ただし、しこりがとれないからと、無理に圧迫すると乳腺が傷つきますので注意しましょう。
しこり部分を冷やすと、痛みが和らぎます。やわらかい保冷パックをタオルで包んで冷やしてみましょう。
■しこりはどのような時に病院にいくべき?
しこりが残る状態が1日経っても改善されない場合は、放置せず、出産した病院やお近くの助産院に電話で相談してみましょう。
そのほか、母乳外来、女性外来、乳腺外科、乳腺外来などでも診てもらえます。
また、高熱が出たり、痛みが強いなど、感染性乳腺炎が疑われる状態の場合には、早めに病院に行きましょう。受診を迷ったら、電話で相談してみるのもよいでしょう。
乳腺炎における「熱」「頭痛」とは
乳腺炎は、おっぱいの痛みや熱感、腫れが見られる病気で、発熱を伴うことが多いです。
産後に、症状として熱だけ出ている場合、おっぱいの痛みや変化など、乳腺炎の症状がないかチェックしましょう。
一般的には、うっ滞性乳腺炎の場合は、おっぱいの熱感だけで熱は出なかったり、微熱程度のことが多く、感染性乳腺炎の場合は、突然の悪寒と38度以上の高熱が出るケースが多く見られます。
ただ、熱の出方は、急に高熱が出る場合もあれば、少しずつ熱が上がる場合や上がったり下がったりを繰り返す場合もあり、熱の出方で原因を自己判断するのは難しいです。
■熱が出た時の対処方法
熱が出た場合は、すぐに病院を受診することが大切です。授乳中は、内服しないほうがいい薬もあるため、家に保管されている解熱剤や市販薬を自己判断で内服するのはやめましょう。
高熱に伴って頭痛や吐き気が起きることがありますが、こちらも自己判断での内服はおすすめできません。
また、しこりの対処方法と同じく、頻回授乳とマッサージを行います。突然、授乳をやめると膿瘍になるリスクが大きくなるので、乳頭の傷や痛みで授乳が困難な場合は、搾乳が必要になります。
感染性乳腺炎の場合は、おっぱいを温めないようにしましょう。炎症が起きている部分を冷やすことで、炎症の広がりを防ぐことができます。
■何科にいけばいい?治療方法は?
まずは、出産した病院に電話で相談してみましょう。そのほか、母乳外来、女性外来、乳腺外科、乳腺外来などでも診てもらえます。
病院では医師の診察・検査後、抗生物質や解熱鎮痛薬などの薬の処方が行われます。熱が下がったからと、抗生剤の内服を勝手に中止することはやめましょう。
膿瘍がある場合、穿刺(針を刺して膿を取り除く)や皮膚を切開して膿を出しやすくする処置が行われることもあります。
乳腺炎で熱、頭痛がでてしまった時の体験談
乳腺炎における「白斑」とは
白斑とは、乳頭の一部に、白いニキビのようなものができた状態で、痛みや乳管の詰まりの原因になります。
チーズや石のようなものが乳管に詰まっている場合や、乳頭の皮膚が部分的に硬くなる場合などがあり、乳腺炎の一因になります。
■「白斑」ができてしまった時の対処方法
温めたタオルなどで白斑部分を温め、白斑のある方のおっぱいから授乳します。ただし、痛みがある場合は、反対のおっぱいから飲ませましょう。
白斑の治し方として、針で白斑を突く取り方や、白斑をニキビのようにつぶす方法などがありますが、自宅でご自身でやるのはやめておきましょう。感染のリスクが高く、感染性乳腺炎の引き金になる恐れがあります。
■何科にいけばいい?治療方法は?
白斑は、数週間から1ヶ月ほど続くことがあります。白斑だけの場合は、母乳外来や助産院に相談してみましょう。
おっぱいマッサージや、白斑部分の詰まりを取ってもらうなどの治療を受けることができます。
白斑のあるほうのおっぱいに、しこりや痛みなどの乳腺炎症状がある場合は、一度病院を受診したほうが安心です。まずは、出産した病院に電話で相談してみましょう。
そのほか、母乳外来、女性外来、乳腺外科、乳腺外来などでも診てもらえます。
乳腺炎における「膿」とは
乳管や乳頭にできた傷から細菌(連鎖球菌や黄色ブドウ球菌など)が感染すると、感染性乳腺炎になり、おっぱいに膿が溜まることがあります。
乳頭から黄色や黄緑色の膿様の分泌物が出る場合もありますが、膿の出口がなく、おっぱいの中に膿が溜まり続けると膿瘍を形成します。
膿瘍は、おっぱいの中に膿が溜まり、部分的に硬くなったり腫れたりした状態で、激しい痛みが出ます。
膿は、外科的処置(穿刺や切開など)で取り除く必要があり、治療せずにいた場合、自壊することがあります。自壊とは、膿瘍ができた部分の皮膚が破れ、膿が外に出た状態です。
■「膿」がでた時の対処方法
膿のような分泌物が出る場合、感染性乳腺炎の可能性が高いため、できるだけ早く病院を受診しましょう。
授乳は止めるのではなく、しっかり赤ちゃんに吸ってもらうことが大事です。
ただ、感染性乳腺炎になるとおっぱいの塩味が増し、飲むのを嫌がることがあります。その場合は、搾乳して母乳を外に出すようにしましょう。母乳が溜まると、症状の悪化を招きます。
■何科にいけばいい?治療方法は?
膿が出たり、感染性乳腺炎が疑われる場合は、乳腺外科、乳腺外来などを受診しましょう。
病院では医師の診察・検査後、抗生物質や解熱鎮痛薬などの薬の処方が行われます。状態によっては、排膿のために穿刺や切開が必要になることもあります。
切開は局所麻酔をしてから行われ、切開部分にドレーン(チューブ)を挿入し、膿がそこから出続けるようにします。
乳腺炎で膿がでた時の体験談
思い起こせば、寝不足とストレスで体力の限界だったのが原因だったのかなぁと。
翌日にしこりができて熱が出ましたが、風邪だろうと勘違いして病院に行くのが遅くなってしまったのも行けなかったのだと思います。(佐々木さん)
どんな症状でも無理はせず病院や助産院に行きましょう。
※感染性乳腺炎になると、助産院では対応できないため、病院への受診をお勧めします。
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看護師、助産師、IFAアロマセラピスト、JMHAメディカルハーバリスト、NCA日本コンディショニング協会認定トレーナー
母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
心理カウンセラー
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