【助産師監修】赤ちゃんの死産。原因や確率について
2018.07.24
AMOMA編集部
妊活中~産後の育児期は、かけがえのない喜ばしい時間であるとともに、時には不安や心配の方が多くなることもあります。“AMOMAよみもの”を通して少しでもその不安を解決し、笑顔で過ごすお手伝いができればと願っています。
浅井貴子
助産師
新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。
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妊娠・出産は奇跡といわれます。赤ちゃんが無事に産まれてくることは決して当たり前ではなく、産声が上がらない、悲しい出産の現実もあります。
今回は赤ちゃんの死産の原因や確率について、ご紹介します。
死産とは?
赤ちゃんが亡くなった状態で産まれることを死産といいます。
お腹の中で亡くなった場合を「死産」、出産後に亡くなった場合、産後7日未満は「早期新生児死亡」といい、死産とは分けて考えられています。
死産の届け出・火葬の規定により、法的には妊娠12週以降は「死産」と定義されています。
しかし一般的・医学的には妊娠12週以降22週未満は「後期流産」、妊娠22週以降を「死産」とされており、産科婦人科学会でもそのように定義しています。
死産には「人工死産」といわれるものがあります。
人工死産とは、人工的に妊娠を中断・赤ちゃんをお母さんのお腹から取り出す処置をし、死産に至ることをいいます。
お母さんのお腹の中では生存しているものの、赤ちゃんの疾患や染色体の異常で出産後は生存が難しいと判断されたとき、その他母体のトラブルなどがあったときに人工死産という判断になる場合があります。
それ以外の死産を「自然死産」とし、人工死産と区別して呼ぶこともあります。
死産の原因は?
死産の原因は分からないことがほとんどです。亡くなった赤ちゃんの解剖を望まない家族が多いため、多くは原因不明と処理されることが現状のようです。
原因には、お母さん側に問題がある場合・赤ちゃん側に問題がある場合、いずれも可能性があります。判明している原因のうち、以下のものが多く見られます。
お母さん側の原因
・常位胎盤早期剥離
・妊娠高血圧症候群
・母体合併症(糖尿病・腎疾患・膠原病など)
・子宮の異常
など
お母さん側の原因のひとつを紹介します。
常位胎盤早期剥離
本来胎盤はお産が終わってから体外に出されるものですが、何らかの異常により子宮内に赤ちゃんがいる状態で先に胎盤がはがれてしまう症状です。
胎盤がはがれると赤ちゃんに酸素が送れなくなってしまい、酸欠状態になり命の危険にさらされてしまいます。予防が難しく、早期発見で助かることもあります。
赤ちゃん側の原因
・胎児の形態異常(心奇形など)
・染色体異常
・多胎・双胎間輸血症候群(TTTS)
・感染症(梅毒・トキソプラズマ・サイトメガロウイルス・風疹など)
・臍帯異常(臍帯巻絡・臍帯過捻転・臍帯真結節・臍帯脱出など)
赤ちゃん側の原因をいくつか紹介します。
臍帯下垂・臍帯脱出
臍帯とはへその緒のことです。赤ちゃんがお腹にいる間は臍帯と胎盤が繋がっており、必要な栄養の補給や酸素を送る役割を担っています。
出産の際、通常はお母さんの子宮から出てくる順番は赤ちゃん・へその緒・胎盤になります。
しかし、へその緒が赤ちゃんよりも先に下りてしまうことがあります。破水前のこの状態を「臍帯下垂」といいます。
この状態から破水し、実際に子宮から臍帯が出てきてしまった状態を「臍帯脱出」といいます。
出産時に先に臍帯が出てしまうと、赤ちゃんが産道を通るとき臍帯を押しつぶすような状態で出ることになります。
すると臍帯が圧迫され赤ちゃんへの酸素の供給が少なくなり、赤ちゃんは危険な状態にさらされます。
妊娠後期に内診や超音波検査に臍帯下垂がわかった場合、帝王切開になることが多いようです。
絨毛膜羊膜炎
細菌が膣から子宮内に入ることで感染します。症状が進むと炎症性サイトカインという物質が活性化し、子宮収縮や子宮頚管熟化が起こり早産につながります。
上記の他にも、血栓などの血液凝固異常、胎児水腫、Rh血液型不適合妊娠など、原因は多岐にわたります。
死産の確率は?
総務省の調査によると、平成28年の妊娠12週以降の死産数は20,934件。100人に約2件の割合です。
ピークは昭和36年で100人に約10件の割合となっていましたが、以降死産は減少傾向となっています。
なお、平成28年の死産数のうち、自然死産数は10,067件、人工死産数は10,867件となっています。
自然死産数のうち、6割ほどが妊娠12週から19週で死産となっており、妊娠後期になると死産率はぐんと下がります。
また、同じように周産期死亡の動きについても調査されています。周産期死亡率も死産率同様、年々減少しています。
周産期死亡とは、妊娠22週以降の死産に、産後7日未満で死亡した新生児(早期新生児死亡)を加えたものを指します。
自分でできる予防策は?
世界の中でも日本は安全にお産が出来る国として知られており、医療の進歩で救える命は増えてきています。しかし医療は完全ではありません。
元気な赤ちゃんを産むために、自分でできる範囲のことは意識して取り組みましょう。
妊婦健診を必ず受ける
当たり前のことですが、医師の指定したスケジュールできちんと健診をうけましょう。トラブルがあったときや、その原因が見つかったとき、未然に防ぐことができるかもしれません。
胎動数をカウントする
胎動を感じられるようになる妊娠中期〜後期より、胎動のタイミングやペースを覚えておきましょう。
一日にどのくらいの胎動があるのか・どのくらいの強さなのかを把握し、いつもと違うと感じた場合には、早めにかかりつけ医を受診することも異常の早期発見につながります。
葉酸を摂る
先天異常のひとつに、赤ちゃんの脳や脊髄が正常に発達できない「神経管閉鎖障害」があります。大きく分類し「二分脊椎症」と「無脳症」があり、発症した場合流産や死産になる可能性もあります。
この障害を引き起こす要因の一つとして妊娠初期の葉酸不足が指摘されています。
主要な臓器は妊娠4週~7週のあいだに形成されるといわれており、妊娠する1ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間に葉酸を摂取するよう、厚生労働省が重要性を発表しています。
今は母子手帳にも葉酸の積極的な摂取について記載されています。
これから妊娠を希望している方は、妊娠前から意識して摂るようにしましょう。
ただし、葉酸は水溶性で水に溶けやすく熱にも弱いという性質があるため、どの食材も調理法によっては多くの量が失われてしまうといわれています。不足分はサプリメントで補うといいでしょう。
タバコを吸わない
妊婦の喫煙により、流産、早産、死産、低体重児、先天異常、新生児死亡のリスクが高まることが明らかになっており、厚生労働省でも危険性が報告されています。
タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素は血管を収縮させて酸素の運びをさまたげるため、胎児に必要な栄養や酸素が十分に届かず、発育不全、先天奇形の原因となることがわかっています。
タバコを吸わない妊婦に比べ、喫煙する妊婦の死産率(28週以降)は1.2~1.4倍、周産期死亡率は約 1.4 倍といわれています。
妊婦本人が吸わなくても、他人の煙を吸わされる受動喫煙でもリスクはあります。夫や同居の家族にも、なるべくタバコは控えてもらいましょう。
いかがでしたでしょうか。待望の赤ちゃんを亡くしてしまう悲しみの大きさは計り知れないものです。赤ちゃんが無事に産まれてくることは奇跡です。
仕事や家事などで無理をしてしまいがちな妊婦さんも、まずはお腹の赤ちゃんのことを第一に過ごしてくださいね。
もし、悲しくも死産という現実が訪れてしまっても決して自分を責めないで、グリーフケアとして助産師、臨床心理士などの専門職を頼るのもよいと思います。
そして身近な人と感情を共有してください。赤ちゃんはきっと、ママが落ち着く事をいつまでも見守ってくれています。
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看護師、助産師、IFAアロマセラピスト、JMHAメディカルハーバリスト、NCA日本コンディショニング協会認定トレーナー
母乳育児、新生児~幼児にかけての育児相談全般、アロマやハーブを使用した産前、産後ケア 代替療法全般
管理栄養士・幼児食アドバイザー
メンタルヘルス食カウンセリング、子供の心を育てる食育講座、企業向け健康経営セミナーなど
日本神経言語心理家族療法協会公認家族心理カウンセラー、NLPファミリーセラピー・マスタープラクティショナー、子どものこころのコーチング協会インストラクタ
心理カウンセラー
日本産婦人科学会会員その認定医、産婦人科専門医、日本ソフフロロジ学会会員、東京オペグループ会員、日本アロマテラピー学会会員
産婦人科医
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