ママの心と体

転勤族の妻~夫以外話す人がいない孤独~

2016.02.28

夏川 ユキ

Writer / 看護師

0歳2歳の姉妹を育てています。看護師ですが育児休業中で、将来はお母さんたちの支えになれるような助産師、もしくは産科の看護師として働きたいと思っています。食事や健康、育児について学ぶのが大好き。アロマやハーブティーに触れる時間が憩いのひとときです。

孤独で過ごした1ヶ月

転勤

初めての出産、見知らぬ土地での子育てなどなど、転勤族の妻は境遇や環境の変化から社会的な孤独に陥りやすいものです。

私は、娘が7ヶ月の頃に夫の転勤の都合で住んだことのない土地へ引っ越しました。

引っ越しはこれで2回目。

前の土地には1年半ほど住み、妊娠中から通った母親学級で「ママ友」を超えた「親友」といえる人が出来ました。

あれこれ子育ての悩みや他愛もない話をすることで、長女が生まれてからも楽しく過ごした日々。

正直なところ、折角慣れてきた街を離れるのはさみしかったです。

新たな土地に引っ越した後、気候の変化や疲れなどの影響か、私も娘も発疹や発熱に悩まされることに。

でも引っ越したばかりでどこの病院へ行けばいいのか、その病院の評判どころか、道だってわからない。

娘を片手に抱えて、まずは銀行やスーパーの場所など生活するための情報集めに錯綜…。

スマートフォンでどんなことでも調べられるので助けられたことが多かった一方で、私と社会との接点を隔絶する落とし穴となりました。

スマートフォンを使えば誰と話すこともなく、何でも調べられてしまう。

昔だったらわからないことを、近所の人や身の回りの「だれか」に聞くことで、そこからつながる知識や交友関係があったもの。

文明の利器に頼ってしまった私は、夫以外の「だれか」と話すことが全くないまま、1ヶ月が過ぎていきました。

私を救った先輩ママの「大丈夫?」

女性

あっという間に過ぎた1ヶ月。誰かと話さないと、ストレスをため込んでしまう…と、最寄りの支援センターへ出向くことにしました。

そこには、初対面の先輩ママがたくさん。人が多いところは苦手じゃないし、これまでの私なら不安などないはずでした。

しかし、1ヶ月夫以外誰とも話さず、初めての育児で疲れもストレスも溜まっていた私は、

「誰かと話したい、繋がりたい。」そんな気持ちがコップからあふれ出しそうで、ギリギリのところで平静を保っていたものの、一言声を発したらどっと涙があふれてしまいそうでした。

きっと、ひどい顔をしていたと思います。

そんな時、「大丈夫?」声を掛けてくれた人がいました。

「何か話さないと」と思うのに、1ヶ月のブランクからか、いつもならよどみなく出てくるはずの言葉が、ところどころで詰まってしまう。

当たり障りのない話をするなかで、「引っ越してきてずっと夫以外と話してなくて、話す人がいなくて…。」

ほんのささいな話から、私の本心が滴のように漏れだすと、その思いは堰を切ったようにあふれ出してきて、最後はもう号泣していました。

話しかけてくれたのは3人の子供がいる、自分よりも年上の人。

嗚咽でうまく言葉にならなかったけれど、その女性はうんうん頷きながら、少し涙ぐみながら一生懸命背中をさすって話を聞いてくれました。

話しながら、自分の思考が少しずつまとまっていくのを感じました。

夫は転勤先で、慣れない職場で頑張っているのに、私は弱音なんて吐けない。

私は私で道を切り開かないと。この「孤独」を乗り越えないと、そう思ったのです。

孤独から抜け出すために

支援センター

この一件から、近くの支援センターへ頻繁に通うことにしました。

そこで、同じ年頃の子を持つ母親に自分から話しかけ、育児のことを中心に話すことで、少しだけ孤独感が和らぐように。

でも、どこか満たされませんでした。

私たちは、子供たちの母親である前に、一人の人間。もっと自分自身のことを話したり、相手のことも聞いたり、さらけ出せる仲になれる友達がほしいと思った私は「年齢に関係なくため口ではなしませんか?下の名前で呼んでもいいですか?」と提案してみました。

たったそれだけなのに効果はてきめんで、一気に親近感が湧き、相手との距離が呼び方以上に近づいた気がしました。

私たちは「○○ちゃんのママ」という名前じゃない。

育児の話ももちろんしたいけれど、それに伴う自分自身の孤独や悩み、面白おかしい話、たくさんのことを話したいという欲求もあります。

こうして自分が一歩相手に踏み込むことで少しずつ友達ができ、交友関係が広がったことで、気付けば孤独を感じることはなくなっていきました。

これからも

友達

夫が転勤族である以上、これからも転勤はくり返します。

また引っ越すんだから、この場では友達を作っても仕方ない、とは思いません。

たとえ一期一会の出会いであっても、頼れる人が近くにいない転勤族だからこそ、

出会いの楽しさや人同士のつながりの強さを知っている転勤族だからこそ、

友達は必要なのです。

こんな風に私が思えたのは、あの日あの時「大丈夫?」と声をかけてくれたあの先輩ママがいたから。

そんな私は、いつの間にか二児の母。転勤に伴う不安がないとは言えませんが、どんな場所だって友達がいれば楽しめると思います。

どこかで困っているママたちへ。
「大丈夫?」、今度は私が声をかけるからね。

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